イベント情報

オーガニック&ナチュラル ポラン広場東京の集い2019

タネの持つ魅力と豊かさ タネと人間の素敵な関係を知る! オーガニック&ナチュラル ポラン広場東京の集い2019
日時 2019年02月10日(日)  13:00 ~ 17:00
場所 三鷹産業プラザ 7階 703~704会議室
東京都三鷹市下連雀3-38-4 (JR中央線・総武線 三鷹駅南口より徒歩約7分)
参加費 1,000円 (事前申込で無料)
主催 NPO法人ポラン広場東京
申込み
問合せ
下記までお名前・連絡先・人数をお知らせください
NPO法人ポラン広場東京 事務局 (担当:佐藤)
〒198-0052 東京都青梅市長淵 4-393-11
0428-22-6821 (受付時間平日09:00~18:00)
0428-25-1880
office@polano.org

プログラム

13:00
開場
13:30
開会
13:45~15:15
西川芳昭さん講演
15:30~17:00
質疑応答・意見交換

チラシ(11.3MB)

第一部 西川芳昭さん 講演

テーマは“種子・種・たね・タネ・seed”

今回のテーマは ”種子・種・たね・タネ・seed” タネの持つ魅力と豊かさ、タネと人間の素敵な関係について考える!
講師は、奈良県の種苗農家生まれの農学博士、龍谷大学経済学部教授 西川芳昭先生にお願いしました
西川先生は農業・農村開発、農業・資源経済学がご専門で、『奪われる種子・守られる種子』『種子が消えれば、あなたも消える-共有か独占か』などの著書が多数あります
経済中心主義的な議論からではなく、生きている存在であるタネの持つ魅力、タネと人間の素敵な関係、本当の豊かさを知る。そこから、種子法廃止・多国籍企業の種子独占・遺伝子組み換えなど現在の社会経済システムの問題性を照らし出し、゛食料主権”の考え方を明示して、持続可能な世界のための多様な種子システムの展望まで、縦横に展開します
私たちは、オーガニック再創造を目指し、生産・流通・消費の三位一体で地域性・持続性・多様性に配慮したオーガニック&ナチュラルの取組みをすすめます。種子はそのとても重要な核を成す存在です

講師プロフィール

西川 芳昭 (にしかわ よしあき)
龍谷大学経済学部教授 博士(農学)

1960年奈良県生まれ、京都大学農学部卒業、バーミンガム大学公共政策研究科修了。国際協力機構、農林水産省、名古屋大学教授などを経て現職。専門は農業・農村開発、農業・資源経済学。主要作物種子法廃止法案審議において、参議院農林水産委員会に野党側参考人として招聘された。『生物多様性を育む食と農』『奪われる種子・守られる種子』、『種から種へつなぐ』『種子が消えれば、あなたも消える--共有か独占か』など著書多数

西川芳昭研究室 www.nishikawa-yoshiaki.jimdo.com/

第二部 参加者との質疑応答・意見交換

参考資料

『地域でつなぐタネの未来』 西川 芳昭

タネ(種)屋の息子に生まれた筆者は、大学で遺伝や種子生理を学んで以来30年以上タネと人の関係について興味を持ち続けてきましたが、最近突然タネが日常の話題に上るようになり驚いています。
国の責任で稲・麦・大豆の優良な種子を供給するしくみを定めた主要農作物種子法(1952年制定。以下、種子法)が、2018年4月に廃止され、一部の農家や市民が、農と食の将来について不安を覚えたことが理由でしょう。タネを研究している筆者にとって、タネが注目されることはうれしい半面、一方で誤解も広がっていることを憂いています。本稿ではタネと人の 素敵な関係を築くために必要な情報を共有したいと考えています。

[「タネを守る」とは「タネを使う」こと ]
まず前提として、「タネというものは公共の 財産であり、誰かの持ち物ではない」という考 え方があります。人間と作物は、人間が作物の 世話をし、作物は人間に食物や繊維などを与え てくれる支え合いの中でお互いの命をつないで います。通常の資源は使うとなくなりますが、 タネを含めて生物は増殖するので、人間がタネ を使ってこそタネの未来は守られます。
農業にとって品質の良いタネを持続的に入手 できることはとても重要です。持続可能な社会 の実現のためにも、私たちがどのような農業を したいのか、どのような食を求めているのかを 考え、タネを生活に必要なものとして利用できる社会を築くことが大切です。

[タネは旅をする-農林10号の物語- ]
タネは、経済用語で「遺伝資源」といいま す。私たちが日常食べている作物は世界中の遺 伝資源が利用されて作られた優れたタネによっ て生産されています。トウモロコシは中米、小 麦は中東で栽培化されました。コシヒカリのイ モチ病耐性遺伝子は、フィリピンやアメリカな ど世界中から来ています。タネは旅をして、私 たちのところにやってきたのです。現在の日本 の領土内に起源をもつ作物は、ワサビ、フキ、 ミョウガなど、ごくわずかです。そう考える と、「日本のタネ」を守るなどという考えが、 いかに作物と人間の世界的な相互依存関係から かけ離れた考えかが分かります。
旅するタネの最も有名な例を紹介します。農 林10号という小麦の品種があります。東北地 方で育成され、背が低くて頑丈で多くの穂を付 けても倒れない性質を持っています。第二次大 戦後、占領軍の農学者サーモンが、このタネを アメリカに持って帰りました。アメリカに渡っ た農林10号は、アメリカの品種と交配され、 「ゲインズ(収益)」という品種が作られまし た。さらにこのタネは旅をしてメキシコにある 国際研究所にいたボーローグという研究者の手 に渡ります。彼は、開発途上国の飢餓をなくす 研究にこのタネを使ってインドやパキスタンの 環境に適した品種を育成し、1965年から翌年 にかけて大凶作のときに、数万トンのタネを送りました。それによって、インドでは小麦の収 量が倍近くになり、パキスタンでも自給が可能 なレベルに達したそうです。
もともと中東で栽培化された小麦が日本で品 種改良され、アメリカ、メキシコを経由してイ ンド、パキスタンで飢餓を救いました。この業 績でノーベル平和賞を受賞したボーローグは、 農林10号の開発者である稲塚権次郎に対し て、「農林10号を作ってくれてありがとう」 と言ったそうです。稲塚は「農林10号を広め てくれてありがとう」と返しました。この物語 は、仲代達矢主演で『NORIN TEN~稲塚権次 郎物語』という映画にもなっています。  企業の論理は別ですが、作物の品種改良を行 う人たちの多くは、開発した品種やタネを自分 のものだとは言わない傾向があります。

[種子法が守ってきた協働の関係 ]
種子法というのは、3つのことを決めていま した。1つ目は、都道府県がその地域に合った 品種、すなわち奨励品種を決めるための試験を 行うこと。2つ目は、決まった奨励品種につい て、原種、原原種を生産すること。原種は、農 家がまくタネの親の世代、原原種はそのまた親 の世代、つまり祖父母のタネをいいます。新し い品種が開発されたとき、手元にあるタネの量 はほんの一握りであるため、何世代かかけてタ ネを増やすわけです。
3つ目は、最終的に農家がまくタネの生産圃 ほ 場を選ぶこと、タネを生産している間にも他の ものが混ざらないよう調べ、助言・指導を行う ことです。国・県・JA・農家が協力して、私 たちの食卓を守ってきたのです。
似た名前の法律に種苗法があります。種苗法 は、品種の育成の振興と種苗の流通の適正化を 図るための法律で、品種を作った人の知的財産 権を守る法律です。種子法がなくなることで、 日本のイネの品種が海外の企業に流出する、と いうような誤解がありますが、それは種苗法の取り扱う内容です。
種子法廃止のポイントは、食料安全保障の側 面で主要作物の種子を供給するという国の責務 が放棄されたことです。さらに、納税者として 気になることは、種子法廃止とともに制定され た農業競争力強化支援法で、積極的に国や県が 持っているノウハウを民間に出すことを促して いることです。将来、私たちの税金によって公 的機関が開発した品種やノウハウが特定の企業 に占有される可能性は否定できません。
ちなみに、種子法の範囲外ですが、私たちが 食べているほとんどの野菜は「F1」という交 配種です。品質がそろい、流通しやすいので、 広く利用されています。F1なしには産業として の農業は成り立たないといってもよいでしょ う。F1のタネは一代限りしかその性質を保て ず、同じものを作るには毎年タネを買う必要が あります。タネが採れないわけではなく、トマ トなどでは、F1から自分の好みのものを選抜し ている農家もあります。ただ、タネが採れない 技術(雄性不稔)を使ったF1品種もあり、タネ が企業に支配されるという批判の要因となって います。

[品種育成者の権利か、農民の権利か ]
次にタネをめぐる世界の議論を紹介します。 産業として新しい品種を育成した者に付与する 権利(知的財産権)に対して、有史以来タネを 採り続けてきた農民が持つ権利の両方を対等に 認識しましょう、という考え方に基づいて、2001年に「食料及び農業のための植物遺伝資 源に関する国際条約」に「農民の権利」が明文 化されました。現時点では日本政府はこの権利 を積極的に認める方向にはありません。また、 条約中の「farmer」という言葉を「農民」で はなく、「農業者」と訳し、産業的に農業を営 む者というニュアンスを強くしています。日本 では、農家の大半がタネを企業等から買ってい るので、自分でタネを採る権利は重要ではないというのが政府の考え方かもしれません。作物の品種というのが「資源」として認識さ れ、それを加工して商品が生み出されるという 産業としての農業のみに注目すると、農家自身 の自家採種や種苗交換は想定外になります。自 分の食べるもののタネを採って次の世代に継い でいくというのは人間にとって当たり前の行為 ですが、日本を含む先進国の制度、しくみの中では、この行為がないがしろにされがちです。 だからこそ「私たち自身がどのようにタネを採 り続けるのか」を自覚することが重要になって きます。
条約にはタネをみんなで継いでいく考えがあ るのに、各国政府は必ずしもそれに賛同しない 動きがあります。そこで、タネを継ごうとする 人たちが交流して意見交換を、ということで、 市民や農民団体が条約の加盟国代表が集まる会 議の場で情報共有を行い、政府に働きかけてい く動きも世界中に広がっています。筆者がその 場で報告してきた、日本のタネをつなぐ素敵な 事例を紹介します。

[地域でタネを継ぐ取り組み ]
野菜の話になりますが、日本各地でタネを継 ぐさまざまな取り組みが行われています。
広島県農業ジーンバンク*(種子の保管庫) では、広島県内でかつて作られていたけれど現 在は作られなくなった野菜のタネを保管してい ます。農家や市民がその野菜を作ってみたいと 思ったときに、そのタネを貸し出してもらえま す。国のジーンバンクは、研究や育種のために しかタネの提供はしておらず、原則として一般 の農家の利用はできないので、興味深い事例で す。
奈良県の「プロジェクト粟 あわ」では、大和の伝 統野菜を調査する非営利の法人と、タネを使っ て野菜を作る農業法人、そして野菜をレストラ ンで提供する営利企業が三位一体となって活動しています。
京都府立桂高校では、伝統野菜のタネをクラ ブ活動として継いでいます。京都には門外不出 で、研究者が来てもタネを出さない農家もあり ますが、高校生が「この野菜、私たちの世代に つなげたいんです」と言うと、農家も「そんな に言うのだったら、作り方を教えてあげるわ」 と応じました。2017年は、14種類の野菜のタ ネを採って次の世代につなげただけでなく、機 能性の研究も行い、京野菜の1つである「桂う り」を使った糖尿病患者向けのスイーツ開発な どで、伝統野菜の積極的利用を促しています。
* 一般社団法人 広島県森林整備・農業振興財団 農業ジーンバンク

[「食料安全保障」とともに 「食料主権」実現を ]
「食料主権」という言葉があり、これは「食 料安全保障」とは異なる概念です。食料安全保 障は、自給率が40%を切っているというよう な主として量的な確保の概念です。それに対し て「食料主権」という言葉は、「何を作るか」 「どうやって食べるか」などについて、私たち 一人一人、農家の人も消費者も、流通の人もレ ストランの人も、それぞれが決める権利です。 国や地域での取り組みも含まれます。これは国 連の人権宣言と関連した「食への権利」とし て、人権の一部とも考えられています。
産業的な農業のためには、企業が種子を供給 するしくみは重要です。ただ、それだけでは農 業は成り立ちません。国や都道府県による公的 種子供給と農家自身による自家採種、そして企 業による種子供給、こういうものがすべてそ ろったときに、生活の一部・社会の一部として の農業の営みを基盤として、持続可能な農業と 食が保たれます。あまりにも産業的な農業や競 争力に目を向け過ぎている現在の政策は、市民 にとって持続可能な社会を創り出す基盤を失う 危険があります。多様なタネと私たちとの関係 を大事にしていくべきだと考えます。

国民生活センター「国民生活 消費者問題アラカルト2018年.11月号」より転載

参加・協賛・協力一覧

[参加者 (NPO会員・関係者)]48名

青森
(有)瑞宝 中里町自然農法研究会 三上 裕恵 / 三上 智暉、(有)ナチュラル農究 松橋 武明
茨城
(株)照沼勝一商店 照沼 勝浩
群馬
関口 惣一、(株)プレマ 飯野 晃子
千葉
(株)千葉産直サービス 清水 千種 / 佐藤 康知
東京
(株)安間産業 安間 孝一、(有)池谷 森屋 一穂、遠忠食品(株) 宮島 一晃 / 山口 希海 / 渡辺世奈 / ほか1名、(有)カンホアの塩 下条 剛史、(株)グリーンノート 堀江 裕明 / 文野 薫、(株)クレヨンハウス 岩間 建亜ほか1名、自然村 吉村 文夫 / 吉村 佳子、(有) 食通 井上 敏夫、 (株)登喜和食品 遊作 誠 / 遊作 篤、(株) 橘学生会館 倉持 泰之、(一社)フードトラストプロジェクト 徳江 倫明
神奈川
美稲穂 稲澤美穂子
山梨
青野 武 / 青野優子、清水 浩二、立野 健
長野
(公財)自然農法国際研究開発センター 岩石真嗣 ほか1名、吉澤農園 羽田玄大 / 羽田友美子
静岡
(株)シガポートリー浜松支店 小杉 和弘、(株)瑞雲 堀口 照正、依田 健太郎
愛知
(株)角谷文治郎商店 角谷 治子 / 高橋 通雄
大阪
(株)げんきタウン 森 龍三
熊本
津奈木甘夏生産者の会 西 隆 / 西純代、(有)肥後あゆみの会 澤村輝彦
鹿児島
(株)ありがとうコーポレーション 岩本 卓也、(有)カワノすり身店 河野良子 / 占部梓

[参加者 (一般)]49名

[参加者 (運営・スタッフ)]14名

[協賛]

北海道
富良野ー百・我 阪井永典、(有)べにやビス べにや長谷川商店
青森
(有)瑞宝、(有)ナチュラル農究
秋田
(株)大潟村カントリーエレベーター公社
茨城
額賀敏
千葉
今井製油(株) 、(株)千葉産直サービス
東京
(株)安間産業 、(有)池谷、(有)カンホアの塩、(株)グリーンノート、(株)クレヨンハウス、(有) 食通、 (株)登喜和食品
神奈川
(有)金子製麺
静岡
(株)シガポートリー浜松支店、寺社畑園、(株)フルーツバスケット
山梨
青野 武、清水 浩二、立野 健
長野
藤田 孝広、吉澤農園
大阪
(株)げんきタウン
高知
(株)ハート
熊本
津奈木甘夏生産者の会、(有)肥後あゆみの会
鹿児島
(株)ありがとうコーポレーション、(有)カワノすり身店

[協力]

北海道
(有)べにやビス べにや長谷川商店
岩手
尾田川農園
群馬
(株)古代米浦部農園
東京
POD (株)ポラン オーガニックフーズ デリバリ
神奈川
美稲穂 稲澤美穂子
アクセス

三鷹産業プラザ    JR中央線・総武線 三鷹駅南口より徒歩約7分
中央通り3つ目(三鷹産業プラザ東)の信号を右折

ポランとは

1984年に発足した「オーガニック」専門流通販売組織
そして そこから誕生したNPOポラン広場東京
ふたつが有機的生産のために共働する ネットワーキング事業の総称です
あなたの参加が、「オーガニック&ナチュラル」を基にした生産・製造・流通・販売・消費・生活のネットワーキングをより豊かにします

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特定非営利活動法人
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