オジサンの料理術    日本の食文化について考える料理の基本的な知恵「さしすせそ」

11. 料理酒の使い方アラカルト

素材に向き合い、そこから旨味をいかに引き出すかが調理・料理の基本だということを力説してきました。そして、そのための調味料としては日本酒が欠かせないものだと言う事も。ところが簡単・便利をうたい文句にした○○のたれとか○○の素といった複合調味料が氾濫しているのが現状です。こういった調味料は「味は付けるもの」という固定観念から生まれたもので、調理の基本からは程遠い邪道な製品だと思います。しかもその内容たるやひどいもので、添加物、化学調味料のオンパレードです。こんなものを使ったのでは添加物だらけの加工品を家庭にまで持ち込んでしまうことになりますし、素材の良し悪しも全く無視されてしまうことになります。素材が違っても日本中で同じ味付けのものを食べるのかと考えるとぞっとしてしまいます。「お袋の味」がいつのまにか「メーカーの味」になってしまってはいませんか?なんでもない日常の素材をいかに安全で美味しく食べるかが家庭料理の基本のはずです。

つい最近新聞記事にこんなコメントをみつけました。高級スポーツカーのデザインで有名な奥山清行さんは、日本人の長所は?という記者の問いに「切り捨てる能力にたけていること。茶の湯や能や、日本建築もそうですが、シンプルさの中に奥深さを生む文化をもたらたした。情報があふれてどんどん複雑になる世の中で、この能力は価値を増すと思います」(朝日新聞12月9日)食の世界でも同じことが言えるのではないでしょうか。それだからこそ日本食が世界的に注目されているのだと思うのです。

さて、日本酒を料理酒として使うには品質に条件があることを以前お話しました。(04.日本酒の調味効果とは)ここで簡単におさらいしておきましょう。

  1. エキス分の多い純米酒であること
  2. アルコール度数が高いこと(16度以上)
  3. 成分を分析し、情報を開示している蔵元の製品であること

アラカルト

煮物
素材の持ち味を引き出す力が強いので調理の早い段階で使うのがコツです。水煮・下煮の時に、素材の2%をめどに入れてください。素材の旨味が引き立ちますので、砂糖、塩、醤油、味醂等の使用量を減らす事が出来ます。
炒め物
素材に料理酒をスプレーしながらいためてください。塩、醤油は少な目に。
炊飯
更に塩を少々(0.6%以上)加えていただくと、ご飯の美味しさが増すばかりか、日持ちが伸び、冷えたご飯も美味しく食べられます。(アミノ酸の防腐効果)
だし取り
09.「酒とだし」こそ和食文化の原点  をご参照下さい。
これから鍋のシーズンです。お手製のだしをベースに「自家製ポン酢」に挑戦してみては如何でしょうか。橙、かぼす、ゆず、レモン、グレープフルーツ等の果汁に塩、酢、醤油、味醂、料理酒、砂糖を加えて煮立たせればお好みのポン酢が簡単に出来ます。是非おためしください。
干物
市販されているアジ・サンマ・目刺し等の場合、焼く前に極く少量塗るか、スプレーして下さい。(30分程置く)生臭みが消え、大変美味しくなります。その上冷めても身が硬くなりません。冷凍等で長期保存するのにも効果的です。冷蔵庫での保存でも、油やけしたりせず、かなり日持ちが伸びます.。
鮮魚・切り身
生の魚を塩焼きする場合、初めに料理酒を塗るかスプレーしてから 塩をして下さい。市販の粕漬や味噌漬等にもお使い下さい。焼き冷しも硬くなりません。
肉類
やはり焼いたり、炒めたり、揚げたりする前に使っていただくと、安いステーキ肉等も大変美味しくなります。
刺身
旨味の乏しいマグロ(キハダ・メバチ)や、くせの強すぎる貝類等にも効果的です。塩を少量ふっていただくと更に旨味が増します。(アミノ酸と塩分が反応する相乗効果)
サラダ
洗ってカットした野菜に水で薄めた(50%程度)料理酒をスプレーして下さい。野菜の旨味が引き立ち、少々時間をおいても、しゃっきり感が消えません。(洗いたてで水滴が残っているようでしたら原液でも可)
てんぷら
衣にほんの少量入れていただくと、ふっくらと揚がります。その上、油の劣化を大幅に遅らせます。(アミノ酸による酸化防止効果)
酒蒸し
魚の切り身に塩と料理酒を振りかけ、水を少々はった器に入れてラップをかけ、電子レンジの「レンジ強」で2~3分加熱してください。(魚の量によって加熱時間を加減してください)切り身類を簡単に美味しく食べる方法としておすすめです。
一夜漬け・ぬかづけ
野菜の旨味が増し、日持ちも良くなります。
でき上がった料理に
塩角を感じたり、酢が強すぎた時、又は もう少し旨味が欲しい時には2~3滴たらして下さい。味が大変良くなります。
酸っぱすぎるミカン類を食べやすくしたり、臭いの強すぎる納豆にも効果があります。(マスキング効果=臭いを包み込んで揮発させてしまうアルコール特有の機能)

ご覧いただいたように良質な料理酒こそ万能であり、「基本」と言うに相応しい調味料だと思うのです。但し、使い過ぎは禁物です。特に風味の乏しい素材の場合はマスキング効果が逆に働いて風味を飛ばしてしまう恐れがありますのでご注意下さい。市販のレシピ本に表示されている「酒」の量の3分の1から5分の1と考えてください。その際、同時に使う調味料も少な目にすることもお忘れなく。尚、出来上がった料理や果物に料理酒を直接振りかけたらアルコール臭くならないかというご懸念があるかと思いますが心配いりません。私の経験では数分でアルコール臭は消えます。これは相手が持っているアルコール分解酵素の働きによるものと考えられます。

私は料理を「推理と達成感を楽しむ科学的なゲーム」と定義しています。推理を働かせて「身体で覚える」のが家庭料理の基本です。良質な料理酒を使って料理を大いに楽しんでください。

※「オジサンの料理術」に関するご感想・ご意見は … info.02.pod@polano.org
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