オジサンの料理術    日本の食文化について考える料理の基本的な知恵「さしすせそ」

01. 美味しいということ

「エビ・カニ・イカ・タコ・サケ・マグロ」 
これは日本人が好きなもの、つまり良く売れるものとして水産業界で言われている言葉です。美味しいものばかりですから異論のある方は少ないでしょう。いずれも旨味の主成分であるグルタミン酸・イノシン酸を多く含んでいるものばかりです。

では「美味しい」というのはどういうことなのでしょう。「美味しさ」を分解してみますと

  1. 素材そのものの味が良い
  2. 調理・加工方法によって味が良くなる
  3. 調味料との出会いによって味が良くなる

の三つに分けて考えなければなりません。今回は3.の素材と調味料の出会いに絞って考えてみましょう。
ご家庭で調理をされる場合、その素材の持ち味を生かすにはどういう調理をして、どんな調味料・香辛料を使うかを考えるはずです。しかし手軽な調味料が氾濫している昨今は、どうしても「素材に味を付ける」ことに捕らわれがちです。その結果素材の持ち味はすっかり無視されてしまっているのが実情です。私達は素材の持ち味を楽しむ為に食べているのです。調味料を味わっているわけではありません。

処で、私たち日本人は「強い旨味に弱い」性癖がすっかり身に付いてしまいました。100年前にグルタミン酸ソーダが開発されて以来、簡単・便利といった風潮に流され続けています。

では、何故これほどまでに、化学調味料に依存しきった食生活を我々日本人は続けてきてしまったのでしょうか?その答えは意外にも「母乳」の成分にあるのではないかと思われます。
「母乳」には、結合アミノ酸(結合してタンパク質を作っている)18種類と遊離アミノ酸16種類が含まれています。その内グルタミン酸がなんと20%も占めているのです。私たちは、生まれながらに「グルタミン酸に弱い」宿命を背負っているのです。
その上、旨味物質四つの内三つまでを日本人学者が発見したというから驚きです。我々は根っからの「旨味物質好き人間」のようです。
ですから、油で揚げ、砂糖や塩で味付けし化学調味料をまぶしたスナック菓子に子供達がはまってしまうのも無理のない事なのです。せっかく日本という「食の天国」に生まれながら、強烈な化学調味料の旨味に取りつかれてしまう子供達の将来の食生活は一体どうなってしまうのでしょう。化学調味料の使い過ぎを、健康面から危惧する方々も少なくありませんが、私は食文化そのものを破壊していることの方が遥かに大きな問題だと思っています。食材に向き合い、その持ち味を如何にして引き出すかという基本的な知恵を忘れさせてしまう恐ろしさこそ化学調味料の最大の罪であると思っています。

醗酵・醸造という誠に優れた手法で作られている日本の調味料の働きを見直すことで、素材の持ち味を充分楽しむことができるのです。実にもったいないことです。本当の美味しさを楽しむためには、素材から「旨味を引き出す」のが先決で、足りない分を調味料で補うというのが正道です。高名なフランス人シェフは「私達の最も大切な仕事は素材のエネルギーをいかに引き出すかである」と言っています。そうする事で、飽きのこない「優しい味」になり、本当の美味しさを楽しむ事ができるのです。

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