フクシマ原発震災を正当に怖がるために

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06. 「放射性物質から身を守る食と暮らし」の参考情報 2
      ~誰でも出来る放射性物質の除染マニュアル〔首都圏版〕~

放射線から身を守るためには、以下の事柄が大切です

  1. 放射性物質を出来るだけ体内に摂り込まない
  2. 放射性物質の体外への排出を促す
  3. 放射線障害を軽減すること
ここでは (1)について考えます

フクシマ原発震災による放射性物質汚染は、福島県外の広域環境中に拡がり、特定地域の狭い範囲で高い線量率を示す場所、所謂「ホットスポット」の存在が明らかになっています。気づかないまま放置しておくと、外部被曝・内部被曝の原因になります
高い線量率を示す場所を特定するための指標と、個人で実施可能な除染法について考えます。首都圏の一戸建住宅を前提としてまとめていますが、集合住宅においても一戸建住宅と共通する樋の排水口その他の除染方法はそのまま適用することができると思います

1.放射性セシウムの分布状態と線量率

1-1 放射性セシウムの分布状態

2011年9月現在、分布している主な放射性物質は放射性セシウム(Cs-137:半減期30年、および Cs-134:半減期2年)です。住宅周辺環境において放射性セシウムの大部分は、地表面(地面、草・苔・枯葉、埃、泥など)、屋根、樹木に存在しています

1-2 線量率と「ホットスポット」

ホットスポットは、周囲より相対的に高い線量率を示す比較的狭い範囲を意味します。広範囲にわたって高い線量率を示す地域は「ホットエリア」と呼び、ホットスポットと区別されます
ホットスポットの目安とする線量率は住宅周囲の状況によって異なることを考慮して、次の様に分類されます

(1)地域全体の線量率が高い場合

例えば町内全体の線量率が高いホットエリアの場合は、ホットスポットは地域の空間線量率と比較して相対的に数倍から数十倍高い線量率を示す場合があります

(2)地域全体の線量率が低い場合

空間線量率が 0.6μSv/h 以上である場所がホットスポットと呼ばれます。0.6μSv/h は放射線障害防止法で定める管理区域境界の線量 1.3mSv/3ヶ月に相当します。それ以下であっても、より低減させることが望ましいのは言うまでもありません

2.住宅周辺のホットスポット

住宅周辺のホットスポットは、2011年3月中旬から下旬にかけて福島第1原発から環境中に放出された放射性セシウムが、自然もしくは人為的活動によって集積したことに因り発生しています。ホットスポットの線量率は、政府及び地方公共団体が測定・公表している当該地域の空間線量率と比較して、数倍~数十倍の値になることもしばしばあります

2-1 居住地域の放射線量を知り、住宅周辺の線量を測定する

(1)公開・公表されている居住地域の放射線量を知ることが第一歩です

参考データ
日本の環境放射能と放射線 / 財)日本分析センター
空間線量・食品・土壌・水道等の3.11前の平均値を知ることができます
放射線・原子力教育関係者有志による全国環境放射線モニタリング
文部科学省のデータを補う目的で測定されている環境放射線量。地表近くでの測定データ
市民グループ「放射能防御プロジェクト」による首都圏土壌汚染調査結果
首都圏130地点から採取した土壌の放射性物質検査結果をMAPと一覧表で見ることができます
専門機関での検査費用は調査に参加した市民の自己負担

(2)ホットスポットを確認するために放射線測定器(ガイガーカウンター)で測定します。購入するか、貸出しをしている市民団体から借りることもできます

参考>
地上5cm50cm放射線計測ネット」 
アースデイ東京や自然育児友の会、子ども全国ネットなどが連携し活動する市民グループです
最寄の公園等も計測して報告する事を条件に1週間単位で測定器の貸出しを行なっています

(3)測定器入手までに時間がかかる場合や、目途が立たない場合でも先送りせず、ホットスポットと思われる場所の予防的除染を行うことをお奨めします

2-2 発生場所

ホットスポットは、以下の場所に多く発生しています

(1)汚染された風雨や雪により直接汚染された物の自然集積

例:土埃の溜まり場、草木・苔の表面など

(2)汚染された雨水中セシウムの沈着

例:雨樋及びその排水口付近、排水溝やマンホールの周辺、水溜りの乾燥跡、錆鉄材、木材や切り株への吸着など

(3)清掃活動、農作業、上水処理、下水処理による人為的なセシウム集積

例:表土や枯葉、藻類等の集積物、浄水場・下水処理場の汚泥など、及びそれらの移設物

3.除染のコツ 掃除と同じ要領で

除染は、放射性セシウムを除去し、線量率を低減させるために行います。除染は、一般家庭で行われている掃除の手法とほぼ同じです。目に見える一般のちり・埃・汚れを清掃することによって、目に見えない放射性セシウムも一緒にある程度除去できます。以下に代表的な除染例と注意点を説明します

3-1 除染時の一般的な注意点
周辺地域の公表されている空間線量率が 0.6μSv/h 以上である場合は、住宅周辺にホットスポットが存在する可能性があります。また可能性は小さくなりますが、0.6μSv/h 以下の地域においてもホットスポットが存在する場合も有ります。ホットスポットと想定される場所を重点的に除染する際の注意点を箇条書きにします

(1)作業前及び作業中

作業時は、放射性セシウムが付着してもすぐに落とせるような服装にする
雨ガッパ(使い捨て雨ガッパ)及び長靴の着用、ゴム手袋、マスク、帽子等の着用が望ましい

(2)作業後

1)手洗い、うがい、シャワーを浴びる
2) 作業着類は水洗する。(使い捨て製品はそのまま一般ごみとして廃棄する)
3) 靴は外で洗い底もよく洗う

(3)除染作業によって発生したごみの処理

1) 草、表土、枯葉等は、拡散しないように二重のゴミ袋等に入れる
2) 幼児等の近付かない場所に一時保管し、自治体の区分に従ってゴミ処理する
3) 放射性セシウムの拡散を避けるため、集めた草、枯葉、土埃等は焼却しない
4) 今後、政府又は地方自治体の処理方針が示された場合は、その方針に従って処理する

3-2 場所別の除染方法を箇条書きにします

(1)縦樋雨下の清掃

1) 雨樋に汚れが付着している場合、デッキブラシやタワシを用いて汚れを落とす

2) 汚れが落ちにくい場合、重曹水や酢を2~3倍に薄めた水を少量かけてこすると汚染は落ちやすい

3) 雨樋やトタンの錆びた部分にセシウムの吸着が疑われる場合は、クリーナー等の洗浄剤やクレンザー等の研磨剤を用いると多少効果が有る

4) 高圧洗浄はある程度有効だが、周辺への塵の飛散に留意する

5) 雨樋下の砂利や土を取り除く。これだけで大幅に線量が低減する

(2)側溝まわり

1) 泥土や枯葉を取り除くことによって、線量率を低下させることができる
2) 流水で付着泥土を洗い流せば、線量率は更に低下する

(3)枯葉・埃の集積物・地表面(土壌、苔、芝、草原、街路樹、樹木等)

1) 地表面の放射性セシウム汚染は、現時点においては表層 1~2cm 以内に大部分が沈着している。表層 1~2cm の土壌や植物類を削ぎ取れば、放射線量は大幅に低減される
2) 芝生や雑草の刈り取りを行い、地表面を掃き掃除しただけで線量率が半減する
*街路樹等に付着したセシウムの除去は、物理的公共的制約から困難。行政による対策が必要

3-3 除染後の放射線測定

(1)除染後は、除染されていることを確認するために放射線測定をもう一度行ないます
(2)枯葉・埃の集積物は、単純に集積物を回収すれば線量率は大幅に低減します

4.家の中での掃除のコツとチェックポイント

屋内は周辺地域の空間放射線量と比べて40~50%低減すると言われています。放射性物質は風や空気と共に家の中まで入ってきます。1日のうち最も長い時間を過ごす家を、安心して過ごせる状態に保つことが重要です
屋内でも放射性物質は、ちり・埃と共にあります。放射性セシウムという名の貧乏神は細部に宿ります。早々に退散してもらいましょう

4-1 掃除の時の服装

マスク、帽子等髪の毛を覆うもの、ゴム手袋、靴下。「ゴーグル」をするとなお良い

4-2 基本的な方法

基本は雑巾での水拭きです。雑巾は一箇所済むごとにこまめによく洗います。洗う時は水しぶきをあげないように。ちり・埃・土が溜まっている箇所は、雑巾が汚れます。洗っても汚れが取れない雑巾は、ポリ袋等に密閉して廃棄します

4-3 掃除の順番

掃除は高いところから、壁や窓→床の順に。壁はドア、額縁等も拭きとります。家具も拭き取り、最後に床です。窓のある部屋、特に寝室は丁寧に

4-4 注意する事

(1)ほうき、ハタキ等埃を巻き上げる方法は不可です。掃除機も排気性能が空気清浄機レベルのもの以外はおすすめできません。空気清浄機を掃除中と後に使用することは有効です

(2)子どもの近くで掃除しない

(3)手指に切り傷がある場合は、傷テープ等で手当てし表面が露出しないようにします

4-5 ここも忘れずに

ランプシェード、エアコン、網戸、カーテンレール、風呂・台所・トイレの換気扇。玄関ドアの内外、靴の底。玄関床は水で洗い流す

4-6 掃除が終わったら

(1) 雑巾は洗って硬く絞り、ポリ袋に入れて口を縛り、ゴミに出す
(2)うがいをし、シャワーを浴びる。身につけていた衣類は洗濯する

5.食べ物を選べば内部被曝の80%は防げる

放射線の内部被曝のうち、その80%は飲食によると言われています
放射性物質検査測定値が検出限界1Bq/kgで未検出の場合に、仮にこれらの生産物すべてに 0.999Bq/kgの放射性物質(セシウム137)が含まれているとして、平均的な年間総摂食量に含まれる放射性物質は、~1歳で328Bq、~14歳で438Bq、15歳~で510Bqになります
これにECRR(欧州放射線リスク委員会)のBqからSv(シーベルト)への換算係数(年齢層別)をかけると、年間の内部被爆線量(mSv/y)が試算できます
結果は、~1歳で0.105mSv/y 、~14歳で0.057mSv/y 、15歳~で0.033mSv/yになります。摂り込まれた放射性物質の体外への排出等による「生物学的半減期」を考慮していませんので、実際にはこれより更に低い数値になる事が見込まれます

先に「放射性物質から身を守る食」の参考情報で紹介した「有機/オーガニックの米穀類・豆類・野菜・果物、海藻や乾物、伝統製法の発酵食品、良質な少量の動物性蛋白による伝統的な日本食」は、「放射性物質の体外への排出」と「放射線障害の軽減」に有効であるばかりでなく、「放射性物質を出来るだけ体内に摂り込まない」ためにも極めて有効だと言えます

参考
『個人住宅ホットスポット発見/除染マニュアル』 日本放射線安全管理学会
『ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010年勧告』 翻訳:美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

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