イベント情報

オーガニックショー ポラン広場東京 2014 よみがえりのレシピ上映会&ミニトーク

よみがえりのレシピ上映会&ミニトーク

11:30~13:30 上映に引き続き渡辺智史監督ミニトーク

在来作物と種を守り継ぐ人々をテーマにしたドキュメンタリー
在来作物は、何十年、何百年という世代を超え、味、香り、手触り、さらに栽培方法、調理方法を現代にありありと伝える「生きた文化財」である。しかし高度経済成長の時代、大量生産、大量消費に適応できず、忘れ去られてしまった。社会の価値観が多様化する現代に、足並みを合わせるように在来作物は、貴重な地域資源として見直されている。在来作物を知ることは、食と農業の豊かな関係を知ることにつながる。地域に在来作物がよみがえり、継承されていく姿は、豊かな食を味わい、楽しむ姿であり、地域社会の人の絆を深め、創造する姿である。この動きを日本全国、さらには世界中で起きている食や農業の問題への処方箋(レシピ)として、伝えていきたい
(よみがえりのレシピ公式サイトより)

ポラン広場の宅配の会員で、バラティ記久恵と申します。ポランの会員になってかれこれ12年。結婚以来、ずっと我が家の食を支えていただいています。いつもありがとうございます。今日は、映画『よみがえりのレシピ』上映の企画立案に関わった者として、この場に立たせていただきました。

昨年の秋、会員向けに、このオーガニックショーの企画アイデア募集のチラシが配られました。それを見て真っ先に思い浮かんだのが、映画『よみがえりのレシピ』の上映でした。アイデアを寄せたところ、こうして上映していただけることとなり、大変うれしいです。ありがとうございます。

よみがえりのレシピ』を知ったのは、2年前、TPP問題に絡んで、遺伝子組み換えについての映画があちらこちらで上映された頃だったかと思います。私もその中のいくつかを見ましたが、「種」の力が脅かされようとしていることにとても大きな不安を感じました。でもその一方で、種が本来持っているその力強さや可能性に興味がわいたのも事実です。こんな一粒の小さな種から、芽が出て作物がなる。すごいことだと思います。

私が食について考えるときに軸としている言葉に【身土不二(しんどふじ)】という言葉があります。これは「人間の身体と土地は切り離せない関係にある」「その土地でその季節にとれたものを食べるのが健康に良い」という考え方で、『よみがえりのレシピ』で取り上げられているような在来作物は、そうした概念にぴったり合うものだと思います。

現在、日本の食糧自給率は4割を切っていると言われており、ほとんどは輸入に頼っていることになるわけですが、先の「身土不二」の観点からすると、これは非常にもったいないことだと思います。

『よみがえりのレシピ』はそんな「もったいなさ」に対し、ポジティブな一石を投じてくれる作品ではないかと思いますし、きっと食以外の分野にも置き換えて考えられる部分があるのではないかと期待しています。

今日は上映後、渡辺智史監督のお話も聞けるとのことで、それもとても楽しみにしています。みなさんどうぞ、最後までお楽しみください。

在来作物から子どもたちへ…お金にならない価値をどのように認識し共有するか

映画製作のきっかけ

2008年の毒入り餃子事件のころ、食をめぐるたくさんの映画が制作され上映されていました。食べものが工業化されて扱われるような映像をたくさん観ているなかで、東京に住む人間のひとりとして何ができるのかを考えていた時期がありました。その答えの一つとしてスローフード運動に出会い、そのような映画はないかと探したけれど、なかった。ならば自分で撮ってみたいと思うようになったのです。その一方で、野口種苗研究所の野口勲(のぐちいさお)さんと初期の頃に一緒にお仕事をしていたということもあって、タネに興味があったんですね。そこで「タネ」と「農業と食についての意識」という問題を重ねあわせてみて、在来種、というテーマって重要だなと思ったんです

そこで、映画のロケ地を探していたら、自分が生まれた山形県鶴岡市に、アルケッチァーノの奥田政行シェフがいらっしゃった。山形大学農学部には江頭宏昌先生もいて、スローフード運動を提唱する食のコミュニティをつくろうという動きが、鶴岡を中心に、とても小規模でしたが始まっていました

スローフード運動が提唱しているのは、3つの柱があります。ひとつが、地域固有の食材を守っている文化や生産者を守っていこうということ。そして、それをどうやって守るかという時に、有識者や料理人、地方の行政の人とか、様々な業種の人々が、地域の食を守るために、今までのコミュニティとはまた違う、新しいかたちのコミュニティをつくっていくことが大事だということが2点目。3番めが、子どもたちの味覚を守るということです。私も映画を撮影しながら、だんだんスローフード運動の教科書のような、意識していくと、そのテーマを掘り下げていくようなことが重要なのだな、ということを身に沁みて感じていきました

震災が教えてくれたこと

(映画は、2010年には撮影に入っていたんですが、その時は)映画に出てきた戦後の食糧難の話とか、昔の話として聞いていたんです。戦後ってそんな大変なことがあったんだなぁ、と、ある種、昔を懐かしむような生産者に共感し、そのお話を「昔語り」として聴いていたんです。けれども、震災をきっかけに意識が変わった

2011年3月11日の震災で、山形は直接の被害はなかったんですが、物流が途絶えてしまいまして、コンビニはじめスーパーからもたくさん食料がなくなっていって、現代社会はなんて化石エネルギーに頼っているんだ!ということを実感しました。自分がそういう体験をしたときに、(取材で)生産者が語っていたことを改めて聴いたら、インタビューの中では、飢えの記憶とか、飢饉の時の話が切々と語られていたんです

もしかしたら在来作物が残ってきた(ことの意味)って、こういうたいへんな歴史があったからなのかな、ということに気がついたんです。かつて東北といえば非常な雪国だったのが、今は高度経済成長でそういうイメージが払拭されたように見えていますが、実は東北は、未だに原発もあったり、東京との関係が非常にバランスが良くない状況がずっと続いていた、そういったことが明るみに出たのが3.11なんですね。(こう考えると)非常にネガティブな部分が多いようにみえる東北なんですけど、その中に、実は次世代に向けてのキーワードになるようなことがたくさん残っていて、それは震災前から実は始まっていたんだ、ということです

それをどういうふうに次の世代に伝えていったらいいんだろうかという使命感、震災後の非常に混沌とした世界の中で、どういうふうに映画をやっていったらいいんだろうかと非常に頭を悩ませました。非常にベーシックな食というのは、いのちを支えていくものであって、昔は食糧難の時代もあって、そのなかで、一冬を大根だけでどうやって生き延びるかというような切実な時代が50年前にはあったということですから、そういう時代に一度振り返りながら、新しい社会を作っていくということが、今の時代に非常に大事ですし、すごくワクワクする社会をこれから自分たち、つくっていけるんじゃないかという、期待を感じながらこの映画をつくりました

広がるムーヴメント

この「よみがえりのレシピ」という映画が、どういうふうに上映されているかというと、すでに(地域で)在来作物の活動をされている方が上映したり、まったく在来作物があるかどうかもわからないけれど、ぜひ自分たちの地域でさがしてみたいという人たちが(その地域で)上映したり、というケースもあって様々です

静岡などでは「(静岡には)在来作物はないと思うんだよね」といっていたんです。研究者の皆さんが山形に研修に来て「焼き畑だけは復活させたいよね」と静岡に帰って行かれて、その方々が実際に農村に入ってみると、在来作物と呼べる名前がついていないような、単なる「ごぼう」とか、「にんじん」としか呼ばれていない野菜たちが、実は自家採種されて、中山間地域で守られていたということがわかってきたそうなんです。なんとそれが今は静岡で100種類近くも見つかっているそうです。それがここ1、2年の動きです

このような動きが宮城でも秋田でもどんどん、映画の上映をきっかけに始まっていまして。(失われてしまう直前で)タッチの差でなんとか見つかったようなタネもあったようなんですが、このように、全国で同時多発的に上映会が続いています

上映しながら、いくつか感じたことがありました。よく、映画の上映後に「在来作物ってお金になるの?」「在来作物ってたくさんつくれないから大変なんだよね」などと、よく生産者の方から聞かれることがあるんです

確かに大変だと思います。映画にも出てきたように、非常に病気に弱いですし、やはり、消えていった背景にはそれなりの理由があったんだと思います。大量生産に向かないとか、化学肥料や農薬を使っても元々そういうふうに品種改良されてものではないので、ほかの新しい品種と比べたら、生産性が上がらないとか。そうなんですが、やはり、お金にならない価値をどのように認識し共有するか、ということが、興味深いことなんじゃないかなと思っていまして、実は自分がまだはっきりした言葉にはなっていないんですが、今、本を書いていまして、その本を書きながら、(映画に登場する)江頭先生や奥田シェフが語っていることが、もっとより多くの人に浸透していくよう、映画を通じて活動して、考えていきたいと思っています

この映画を見た方がぜひ庄内に来てみたいという人が増えました。山形に来て在来作物を食べてみたいという人が増えました。在来作物は大量に首都圏の人に販売するのは無理ですが、10人とか20人なら、実際に来ていただいて食べていただくということも可能なんですね。食べておいしいだけでなく、地域の暮らしとか文化とか、様々な体験をしながら在来作物を理解していくということが重要な観光資源になってきているんです

かつて山形といえば、出羽三山とかミイラとか人面魚(!)とか、ばらばらの観光のイメージ、その中にサクランボがあったり温泉があったり、いったいどんな県なんだろうという感じだったんですが、今は、在来作物があって、アルケッチアーノがあって、お漬物屋さんがあって。小規模なんですが、みなさんつながりがあって、物語として一貫性のあるような姿として見えるようになってきています。大きなことではないんですが、生活に根ざした新しい形の観光資源が生まれようとしています。ぜひ庄内にお越しいただけたらと思います

在来作物・味覚のレッスン

次回作で、短編ドキュメンタリーを企画しています。「在来作物・味覚のレッスン」というもので、味覚教育をなんとか映像化できないかということで、今、編集中です

どうして味覚教育かというと、タネを持っている農家がいらっしゃるということを理解していただきたいなぁということで「よみがえりのレシピ」を全国で上映しています。そんな中から、農家の方を大切にしてみんなで支えていくという動きが全国で生まれているんですが、その一方では、在来野菜の味を本当に次の子どもたちが理解できるのだろうかという、また別の問題、課題があるというふうに思ったからなんです。ファストフードばかりとか菓子パンしか食べない子がいて、家庭の食が乱れていると言われて久しいわけです

その中で、どういうふうに子どもたちの味覚を育んでいくか? そのひとつの事例として、在来野菜を使って子どもたちの味覚を育てていく、というプロジェクトを立ち上げたんです。それを実際に映像で撮影しながら編集中なんですが、たとえば、在来のきゅうりひとつをとっても、普通のスーパーで売っているものなら苦味もなければ甘みもない。というようなものなんですね。ところが在来のきゅうりになると、独特に苦味や甘み渋みがあったりしますし、さらに郷土料理とか、山形のだしが全国的に知られてきていますが、野菜を刻んでそこにお醤油たらして野菜そのものの旨みを味わう、という郷土料理もあります。冷や汁(ひやしる)といって、ちゃんとお出しをとった味噌汁に、千切りにしたきゅうりをいれて、夏、体を冷ます効果のある冷たい味噌汁なんかもあります

なので、郷土料理と在来野菜を組み合わせると5つの味覚、甘い、しょっぱい、苦い、酢っぱい、辛いの5つの味を体験できるということから、フランスやイタリアでやっている味覚教育ほど体系だってはいないんですが、この映像の上映を通じて、地域に食材で子どもたちの味覚を育てるというプログラムを全国の、ご当地の食材で何か動きが生まれないかなと思っています

まず山形県から始めようと思っています。30分ぐらいの映像なんですが、上映が終わったら料理教室をしたり、試食をしてみたり、食べて体験できるようなプログラムをと考えています。今制作中ですが、興味ある方サポートしていただける方いましたら、どうぞよろしくお願いします

こうした活動を「よみがえりのレシピ」を通じて進めているんですが、香港、ハワイ、台湾でも上映していて、アジアのなかでローカルフードが浸透しているなと思います。シンガポールやマレーシアのような新興国では、今まさに高度成長になっていて、まさに今が、タネが失われている時代です。そういう意味では日本が少し、ポスト高度経済成長の社会の姿として、もしかして一歩だけ抜きん出ているのかなと。そんな時代背景、地域が抱えた課題の中で、シンガポールのオーガニックカフェでこの映画をみてみたとか、カルフォルニアのバークレーでは草の根運動で上映会が企画されようとしていたりと、こういう日本のスローフードの映画を見てみたいということが起こっているように思います

日本の和食が非常に注目されていますが、和食という日本の食の王道だけではなくて、多様な日本の郷土料理も、とても重要な文化です。観光地域資源になっていく、という期待も持てるようになってきています。今日来ている方も全国の生産者が来ているということです。「よみがえりのレシピ」全国上映も続いていますので、ご一緒できたらと思っています

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企画意図や内容、寄付金についてはよみがえりのレシピ公式サイトをご覧下さい

アンケートにご協力いただきました
Q:鑑賞後
印象に残った場面や感想をお聞かせください

※ご協力いただいた皆様、ありがとうございました

  • 印象に残ったのは、生産者の方々のお話と笑顔。在来作物や種について興味をもったのは、本当に最近なのですがとてもわかり易く、観ていて笑顔になれ、学べる映画でした。ありがとうございました。(東京都:T様)
  • 印象に残ったのは、食材について語る人たちとたべた人の笑顔。(神奈川県:K様)
  • 印象に残ったのは、人間が種を、種が人間を支えあっているということ。子ども達の笑顔、生産者の生き方が素敵でした。心豊かになる映画でした。私に出来ることを考えていきます。(神奈川県:O様)
  • 印象に残ったのは、種を守ることに使命感を持っている農家の方のお話。在来種を流通にのせるよりも観光資源として現地に足を運んでもらうという考えはしてもよいと思います。(無記名)
  • 印象に残ったのは、きゅうりを食べた子どもたちの顔、生産者の方たちが、自分の野菜を使った料理を食べておどろいている、また喜んでいるシーン。(埼玉県:G様)
  • 印象に残ったのは、渡会ばあちゃんがどうしてもタネを残したい、後藤さん(?)に話した奥田シェフは素晴らしい方だな、在来作物に新たな魅力を加えた。とりあえずおじいさん、おばあさん素敵!とても感動しました。在来作物は文化の伝承、感性の育成などに欠かさないものだ。「次世代」のための考え方、とても素晴らしい。(静岡県:K様)
  • 印象に残ったのは、宝谷カブの料理をレストランで食べながら談笑していたところ。(無記名)
  • 印象に残ったのは、焼畑で在来種のカブが生き生きと育っていたところ。火がもえていたところ。おばあさん(わたらいさん?)がカブの種を一人で細々守っていたところ。種の話はとても気になっていて、この映画をぜひ観たいと思いました。地元が北海道なのですが、歴史が浅いので、在来作物はあるのかな?と気になりました。在来作物の価値は本当にプライスレスなものだと思いました。(東京都:S様)
  • 印象に残ったのは、だいじなものが落ちてたよとお孫さんがおばあさんにただちゃ豆の種を渡したというシーン。母が鶴岡出身、私は調理師、とても興味深い作品でした。人間と作物は共に助けあって生きていた。大切なことを教えていただきました。在来作物で味覚のレッスン!わたしの職場は保育園、日々子供達に給食を作っています。全国に広がることを心から願っています。(東京都:Y様)
  • 印象に残ったのは、一つ一つの作物を育てている方が大切にしている感じ。貴重な映像だと思いました。多くの人に見て欲しいですね。(東京都:Y様)
  • 印象に残ったのは、イタリアンの店主さんの食に対する愛情と農家の方々の野菜に対する思い入れ。次世代に種を残すってことがすばらしかったです。(千葉県:S様)
  • 印象に残ったのは、風土の風が大事だという場面。種=命という点がとても印象的、いろいろ考えるきっかけになりました。(埼玉県:S様)
  • 印象に残ったのは、後藤さんの幸せな様子、生きがい・幸せといっていた渡念さんの様子。幸せな気持ちになりました。(東京都:O様)

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